<現在までの進捗状況及び達成度>
人を気遣う能力をロボットに付与するための感情コミュニケーションを検討している.具体的には,ユーザの感情の起伏に敏感な心臓拍動のゆらぎを計測することが有効であるとの立場から,非接触心電図計測方法を検討している.
静電容量結合型電極を用いると,服の上から心電図を計測することができる.この新しい心電図計測方法を改良し,衣服と電極の摩擦によって生じる静電気のために心電図のベースラインが飽和しやすい,皮膚電極と同様,人体と計測回路のグラウンドをとる必要があるなどの問題を検討し,安定して衣服の上から心電図計測が可能になった.
パジャマなどの着衣の状態で高齢者の睡眠中の心電図,呼吸/体動を計測する睡眠モニタリング・シートセンサを開発した.心電図計測には上記a)の静電容量型電極技術を用い,呼吸/体動センサと一体化した敷布状の本システムによって心電図の異常,無呼吸のチェック,高齢者の寝返り,離床をナースステーションで確認できるシステムのプロトタイプが完成した.本システムの開発段階で2本の特許を出願した他,共同研究機関である三洋電機鰍ノよってシステム全体,センサ単体の事業化が検討されている.
居眠り運転,運転中の心臓発作など,ドライバの異常を検知する手段として,上記a)の静電容量結合型電極技術を用い,自動車とドライバの心電インターフェイスを開発した.ここでは,確実で安定した心電計測を可能とするため,本プロジェクトでは,ドライバの尻の下のシート表皮化に導電布を配置し,ハンドル周囲の金属部をグラウンドとする心電図の単極誘導計測方法を新たに開発した.本研究に関しては3本の特許を出願した.
家庭内でロボットが日常的に人と共存する状況下では,ロボットに人の動作意志を正しく伝えることが事故防止のために必要である.そこで,人の動作意志の推定方法を検討している.
ワイヤー変位センサ3個を被験者の頭部と肩部の間に設置し,3組の変位データから頭部の前後屈,左右側屈,左右回旋を計測するウェアラブルな頭部運動計測装置を開発した.この装置を用い,視覚ディスプレイの種々の場所に大きなフレームと小さな視作業ターゲットを呈示,頭部運動を検証した.その結果,頭部運動は視作業の枠組みに依存して発生することが明かとなり,頭部運動をモニタリングすることで,視覚的な関心領域が推定できることが示された.
微細なステンレス糸を撚り込んだ導電糸が近年開発された.この導電糸を布状に編み込むことによって,心電図電極として機能させることができる他,伸張センサとしても機能しうることが期待される.実験の結果,本センサによって,呼吸曲線と心電図が重畳した波形を計測することができた.なお,本プロジェクトでは,岡本鰍ニ共同で2件の特許申請を実施した.